Mediterranean and beyond

TokyoからBarcelonaを超えTel Avivまで。海と空をまたぐおもしろブログ。

Google X | Jack hidary氏の話

Tel Avivにいていいことの一つは、すごい人の話をものすごい簡単に聞けること。今日参加したイベントはGoogleが主催で、スピーカーはGoogle Xの機械学習部門のヘッドであるJack Hidary氏。これが無料で、しかも超簡単にsign upできる。この街のすごいところだと思う。そして、このイベント超面白かった。

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会場のCampus Tel Aviv

 

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まず、Google Xのミッションが個人的に超刺さる。完全に問題解決を志向していて、世の中にこういう課題があるから、それを最新のテクノロジーで解いていこう、というもの。それが、改良程度の話じゃダメなんだと。10倍良くするくらいの改革じゃないとダメだと。この時たまたま例に出されていたのが、ある食糧(確か卵だったと思う)の生産の話で、Jackが関与していたベンチャーでは生産コストを90%カットすることに成功したと。100のコストで生産していたとしてそれが10になるから10倍の生産性だ。こういうことを目指しているらしい。そして、Jackが強く警鐘していたのが、シリコンバレーにはこの10xのカルチャーが浸透していないということ。どの起業家もアプリを作ってちょこっと世の中を改良、みたいなことを目指している。そうじゃダメなんだと。とにかく社会課題をハードなテクノロジーで解決するというミッション感は強く共感した。

 

次に、Google Xが取り組んでいる課題の現状とその解決策の話も面白い。例えば以下のようなもの;

  • ネットへのConnectivityの問題。現状、世界の人口の40%の人しかインターネットへのアクセスがない。これに対してGoogle XがやっているのがLoon Project。通信設備を乗せたバルーンを飛ばして、4Gの通信を提供するもの。バルーンは基本的に制御できず高度しか変えられないが、機械学習で高い所と低い所の気流の変化とその際の高度のコントロールを学習させることで、一定程度バルーンの動きを制御できている。例えばプエルトリコでは95%の人がネットアクセスがないためLoon Projectを実施していたが、当初100のバルーンが必要だと思っていた所この機械学習で動きを効率化し必要なバルーンを20-30にまで減らすことができた。
  • Misdiagnosisという診断ミスの課題。現状、AIが診断した方が人間より正確な病気の診断ができているケースがある。このアプリケーションでの問題はデータの収集。特にアメリカではヘルスケアシステムが中央で管理されていないため、データを集めるために一箇所ずつ病院を周りデータ取得の許可をとらなければならない。また、99%の診断データがdigitalizeされていない。これらが手間がかかる。イスラエルはヘルスケアが中央管理のためデータの取得が容易。
  • 手術プロセスのオートメーション。手術そのものでなく、手術をするまでのプロセス(何を指すのかは具体的にイメージないけど)をAIでオートメーション化する。インドが超すすんでいて、バイパス手術にかかるコストを1,200ドルに下げることができている。同じことがアメリカでは同じ手術が10,000ドルかかる。
  • 教育の問題。今後数十億人規模で高等教育が必要となってくる人が出てくる。今の教育機関の数から試算しても、この数を物理的に教育するのはかなり無理がある。アメリカだけでも700Kの教育の提供者と需要者のギャップがある。だからCourseraのようなオンラインの教育がソリューションになる。更にAIによってその教育の提供がよりパーソナライズされていく。Amazingなことに機械学習のソリューションは例えばガーナのような途上国でも先進国と同様なスペックが出せる。
  • Codeの問題。現在世の中には1.8 Trillion(1.8兆)行のコードが存在する。ただ、今後デジタルで提供されるものを考えると、コードの必要量とプログラマーの数がアンバランスになる(プログラマーが圧倒的に足りない)。だから、どこかのタイミングでコードがコード自体を生み出すような世界になる。
  • 自然災害の問題。自然災害でもっとも被害を出すのは洪水。この洪水の発生と拡散パターンを機械学習で予測させることで、被害を防ぐことができる。
  • Bioの話。構造として、もっと企業がサイエンティストが行っている研究を世の中に出してaccelerateさせることを手伝うべきだと。これに対してはGoogle accelerated scienceというチームがこの課題に取り組んでいる。

こんな話がたたみかけられていた。

 

最後に、いくつかもっと調べなけれなならないキーワードを知ることができた。

一つはExplainabilityという話。AIと倫理という文脈で、政府に仕組みづくりが求められるという話だが、AIが発展することでどんどん提供されるサービスが複雑になる。それをちゃんとサービス提供主に説明させる必要があるという話。例えば飛行機をAIで飛ばすとしたら、ちゃんとどういうメカニズムで動くのかの説明責任があるということ。

もう一つはQuantum Computing。今は研究段階だが、Quantum Computingの実世界のへのアプリケーションが5年以内には出てくる。これは非連続な発展をもたらすだろうと。

 

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Google X、ミッション感もいいし、初めて直接話を聞けてよかった。

 

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Google Tel AvivからのView