Mediterranean and beyond

TokyoからBarcelonaを超えTel Avivまで。海と空をまたぐおもしろブログ。

Bitcoin emBassy TLV

とにかくテルアビブは動きが目まぐるしい。会おうと思えばするすると人に会える。あるイベントでコンタクト先を知った人を訪ねたら、その訪ね先に新しい人がいてその人とつながり、その人が仕事をくれる、みたいなことが起こっている。人とつながることの垣根が低くて、そこから新しい展開に結びつくのがすごく早い。

 

そんなスピード感に負けじと色々と足を運びこの国で起きていることを掴み取ろうとしているのだが、まさにその核心に近いムーブメントの断片をようやく見ることができた。

 

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同じくバルセロナMBAから交換留学に来ているボリビア人のLeoに誘われ、bitcoin emBassy TLVという施設で行われていたbitcoin関連の集まりに顔を出してみた。その名の通り、BitcoinやCryptocurrencyに関連する事業や、それに関心のある人間が集まり、情報交換を行うというもの。若干アングラ感が漂う会場の中、Cryptocurrencyに詳しい人間(この業界のムーブメントを最初に作ったような人も来ていた)が新しくコミュニティに入ってきた人間に今世界で起きている現状を伝えて、草の根でこのムーブメントを広めていくということがこの集まりの趣旨で、もちろん誰かがスピーチをするわけでもなく、ただ黙々と情報交換が行われている光景はある種異様なものがあった。この集まり、幾つかの意味で非常にセンセーショナルだった。

 

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Bitcoin emBassy TLV

まずは、暗号通貨やブロックチェーンそのものがこれから世の中にもたらしていく潜在的インパクトを、肌でがっつりと感じたこと。この業界に長い人から色々と業界で起きていることや今後潜在的に起こりうることを聞いたが、その中には国家が通貨のコントロール権を失った際の金融政策はどうなるかとか、既存の銀行が消滅した場合に金融機能をどのような主体が担うか(その際は通信会社が一つの候補として挙がっていた)といったスケール感の話が実際に語られていた。また、こうした動きに合わせ、法律の枠組みが大きく変わる可能性があるから、その対策を今から早急に勉強しないといけないと動き始めている弁護士もいた。オンライン上の取引所を開設した起業家もいた。今までWiredで読むだけくらいの世界だったのが、急速にリアリティを増していくことを感じた。それを、今ブロックチェーンの技術では世界最先端と言われているイスラエルで聞いている。世界の新しい一面を覗いているかのような感覚だった。

 

また、その世界に入る入り口は思ったより近いということを知れた。イスラエルの起業家で、オンライン取引所を最近開設したやつが、こちらを日本人だと知ると「日本向けの取引所を開設したくて日本語の翻訳が必要だ。システムは提供するから日本のサイトのオペレーションをやってくれれば分け前は50:50でOKだ」みたいな話をしてくる。その横で、一緒に行った友人も「このbitcoinの交換システムを、bitcoin後進国の南米に持ち込めば、簡単に商売になる」みたいなことを一人しきりに話している。この国ではこういった話がありとあらゆるところで語られていて、この世界への入り口は至るところに開かれているのだろうと思った。尚、Bitcoinの世界では日本は1日の取引量が1,000億円近くになっていて、世界一の取引量を誇っており、六本木あたりがコミュニティの中心になっているらしい。

 

最後に、このブロックチェーンコミュニティ界隈のアングラ感がなんとも好奇心をそそるということ。ここにいる人たちは、どことなく根底にアナーキズムのような政治的な思想が流れていたり、通貨を代替するという壮大な目標が掲げられていたり、このコミュニティにいる人たち一人一人がCryptocurrencyのEvangelistのような役目を担っていて、草の根から革命を起こそうみたいなマインドがあったり、何ともアングラな雰囲気が流れている。多くの人がインターネットの黎明期の雰囲気に今のブロックチェーン業界の雰囲気が似ていると言っているが、インターネットも当初は一部の人間が潜在性に気づき熱狂しているマイナーな領域だったであろうから、似ているのも何となくわかる。正しい比喩なのかわからないが、個人的には何とも言えない「希望の国エクソダス」感を感じた。

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Bitcoin emBassyに置かれていたBitcoin ATM

 

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ようやく、イスラエルに来た醍醐味のような瞬間に出会えた。ブロックチェーンに関してはこれをきっかけにもっと深いところを知っていきたい。

 

イスラエルから見た日本の文化観に関して | Dr. Grossbergの講演

イスラエルにある日本大使館主催で、Waseda Business Schoolの元教授であったKenneth Alan Grossbergさんの講演があったので、日本大使館まで行って聴いてきた。

 

講演のタイトルは、"A consumer's paradise or not"で、日本の消費者行動やマーケットの特徴に関しての講演。こんなんイスラエルでやって誰が聴くのかと思っていたら、会場は60-70人入っていて満席状態で、しかもほぼイスラエル人を中心とした非日本人。加えて、その内の70%近くは日本に行ったことがあるということだったから、驚き桃の木だった。

 

内容はいわゆる日本の文化ってこんな感じだよね、こういう良いところ悪いところあるよね、っていう話だったが、イスラエルから見た日本観という意味で面白い点が結構あったので、ポイントを抜き出したい。

 

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1. イスラエルから見て日本のイケてないとされている所が結構面白い

日本の良いところは、清潔だよね、とか礼儀正しいよね、というところでまあわかったのだが、イケてないところは以下のようなものが挙げられていて、なるほどという感じがした。

  • 飯の一個一個のポーションが小さい。ミニマルなのはわかるのだが、足りない。
  • 確かに物価が高い。東京とNYを比較しても、東京の物価は高い。不動産のレントとかレストランは比較的安いけど、生鮮食品が高い。
  • スーツとかが身体に合うものがない。
  • ハラル認証の店がマジで少ない。
  • 良いチーズがない。
  • 良い家具が高い。あるいはそもそもない。
  • パンとかケーキとかがマジで高い。
  • 外人向けのサービスがやっぱ少ない。(日本は"Carefully isolated market")
  • 老人に対して何で交通費のサポートないの?(電車を想定しているものと思われる)
  • 銀行のサービスはマジでクソ。

 

2. 日本の製品(プロダクト)に対するこだわりって結構独特だよねという話

Kennethさんが言ってたのは、日本はプロダクトに対するHollistic viewを大切にするんだと。つまり、ただ中身が良いだけじゃなくて、その中身をどのように客に届けるか、その見た目はどうか、といったトータルな体験を重視する。例えば、バナナを一本一本包装するとかそういうことをやる。これはイスラエル人からすると良いと思う反面、イスラエル人ならまずしない発想らしい。

あとは、安心感に対するこだわり。狂牛病が発生した際にアメリカからの牛肉を完全に輸入停止にすることなどは、(政治的に利用した可能性という側面はさておき)かなり敏感だよね、ということらしい。

若干違う話だが、日本人のRobot friendly具合も欧米から見ると不思議らしい。老人ホームで人型ロボットが老人とのコミュニケーションで活躍するのも、欧米的には不思議とのこと。これは、日本人は「気を使う」人種だから、逆にロボット相手の方が気をつかわないで済んで気が楽だからだ、というような説明をしていた。鉄腕アトムとか漫画の影響もありそうだが、結構面白いポイントだと思った。

 

3. ミニマリズムって結構ユニバーサルに受け入れられていると思ったら、それって思い込みだったんだという話

個人的に、日本の美的感覚の一つの特徴である過剰を廃したミニマリズム的な文化って、なぜかわからないが世界中どの人も共感できるものだと思っていたんだが(完全な思い込みだけど)、この講演とかオーディエンスの反応を見て、「少ないがいい」みたいな文化って別にユニバーサルな話なんじゃないなと実感した。なんか自分の中で「そりゃあミニリズムは最高でしょ」みたいな発想が染み付いていたら、そのクセを認識した気がする。

 

4. Risk averseな文化をやっぱり日本の組織カルチャーは持っている

講演中に盛んに「日本はFlexibilityがないよね」っていう話をポイントに挙げている人がいたので(Harelさん、としておこう)、講演が終わった後にどう言う意味なのか聞いてみた。その人はイスラエル企業が持っているテクノロジーを日本企業に紹介するブローカーみたいな商売をしている人だったが、彼からすると毎回素晴らしく新しいテクノロジーを持って行っているのに、日本企業は前例主義で中々新しいテクノロジーを採用しないんだ、と言っている。日系の大企業にいた身からすると日本企業の反応の論理は分かって、テクノロジー自体は論理的にはいいものであるとわかっている中だとすると、「良いことはわかるんだけど、なんか信用できるのかわからないよね」っていうような感覚なんじゃないかと思う。この信用できるのか、という点を乗り越えるのにすごい時間がかかるのが日本で、Harelさん曰くイスラエルと日本のカルチャは"Exactly opposite"ということらしいので、彼にフラストレーションがたまるのは仕方ないことなんだろう。ちなみにこの点をHarelさんがGrossbergさんに質問したところ、「世の中には乗り越えられないものもある」みたいな反応でウケた笑

 

5. 「こんなに礼儀正しくて思慮深い日本人なのに、なんで第二次大戦ではあんなcruelなことをしたんだ」という質問に対してどう答えたらいいかわからなかった

これはGrossbergさんに対して初老のイスラエル人(たぶん)が聞いていた質問だが、自分が答えると考えるとなんか自分なりの答えがないな、と思った。Grossbergさんの答えは、「日本人は組織のOrderに対しては従順なので、軍の命令に多くの人が従ったんだろう」というようなものだったけど、自分も答えるとしたらそういう答えだったろうなと思いつつ、なんか通り一遍だなと思ってしまった。イスラエル親日感情がかなり高くて、どこ言っても日本人というとウェルカムされるから勝手に自分たちが良い人かのように思い込みがちなのだが(実際日本の文化とかを過剰評価している日本人はいっぱいいる印象)、実際は戦争の時にかなり残酷なこともしているし、負の側面はかなりある。こういう負の側面をもっと認識して初めて、この質問に答えられるんだろうなと思った。尚、この講演ではこういうストレートな質問始め、オーディエンスがかなりはっきりと物事を言うので、講演として非常に面白かった。

 

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ヨーロッパのビジネススクールにいながらなかなか文化的な側面だけを取り上げて議論することはないので(しかも自分がただ一人の日本人、みたいな状況で)、今回はなかなか面白い経験ができたと思う。

 

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イスラエル大使館内の会場の様子

Shmuel

テルアビブでとりあえず最も困っている(というほどでもないが)のが、食事である。とにかく高い。そして、今のところ必ずしもクオリティが高くない(特にアジア料理)。そんな中において、キラリと光るShmuelというケバブ屋を発見した。

 

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Shmuelが位置するのはカルメル市場という大きな市場の一画。このエリアは野菜や日用品といった生活感がある物品を売っている一方で、屋台スタイルのお店を始めとしてお洒落な飲食店が幾つか並んでいる。

 

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カルメル市場への入り口

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オサレな屋台バー。地元のビールが売っている。ちなみにこのようなスタイルの屋台的な街中の色んなところに見ることができる。

 

 

このカルメル市場の中に、普通の箱型の店舗としてShmuelはある。

ケバブが売りで、普通のケバブからこの店独自のShmuelスタイルという味付けまであり、それぞれピタパンにするのか、違ったパンにするのか、あるいはプレートにするのか選ぶことができる。ここ最近フムスの食いすぎに伴いピタパンに追いかけられる生活をしていたので、迷わずプレートを選択(このプレートで45NIS。約1,400円)。

 

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Shmuelスタイルのプレート。酸っぱめのサラダと、左側にフムス、右側には鶏肉(モツみたいな部位も含まれている)を炒めたものが入っている。椀に入っているのはライスに麺とオニオンを入れて炒めたもの。

これがマジでうまい。フムス漬けであったためあまり肉を食べていなかったせいか、久々に満足感があった。まずこのライスがうまい。オニオンが甘くなるまで炒められていて、そこに香辛料が合わさり(何の香辛料かはわからないが、胡椒のような味がする)、いい感じに仕上がっている。そして、この肉も様々な部位の肉が入っているため、結構な量があったけど飽きない。これをフムスとサラダと合わせたりすると、サラダのさっぱり感とフムスのまろやかさが交わり、また違った食べ物になる。加えて、下の写真にある特製ソースを楽しむことができる。このソース、ベースはマンゴーとのことだが、味は全く甘くなくて、どちらかというとセロリをすりつぶしたような味になっている。マスタードかと思って頂くと不意打ちをくらう為、多少の注意が必要であるが、これはこれでいい感じの酸味が加わり、何度もかけてしまう。あまり食べたことがないような味だ。

 

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謎のマンゴーベースの酸っぱいソース

中東に来た感が味わえる、中々の一品だった。こちらのお店の料理人の方はなかなかぶっきらぼうな感じだったが、カウンター越しの鮮やかに調理していて、見ていて小気味が良かった。質問すると「そいつは特製のソースだぜ」みたいな感じでぶっきらぼうながらも答えてくれるため、いい人なのではあろう。

 

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鮮やかな手つきのシェフ

なお、tripadvisorでもなかなかの高評価を得ている模様。やっぱ中東来てアジア料理を食べるのは間違っていたので、こういうちゃんとこの地方の美味いものをもっと攻めていきたい。

 

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Shmuelの外観。すでにこの時点で雰囲気的にいけている


ShmuelのURL

Shmuel, Tel Aviv - Restaurant Reviews, Phone Number & Photos - TripAdvisor

 

Jerusalem ①

昨日、テルアビブ大学のプログラムの一環でエルサレムに行ってきました。バスをチャーターし、40名近いメンバーとともにガイドの案内のもと行動。テルアビブからほんの一時間の距離。

今回訪れたのはOld Cityと呼ばれる1平方キロ程度のエリアのみ。この小さなエリアの中に、キリスト教ユダヤ教イスラム教の最も重要な聖地の一つがひしめき合っている。

異なる宗教の聖地が近所に居座っている、キリスト教内の争い、なぜ今のエルサレムが成り立っているかなど、正直かなり複雑なストーリーで、今回だけでは消化しきれなかった。また必ず訪れると思われるので、今回は写真とファクトと小話のみを貼っていきたい。

 

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Jaffa門。旧市街に入る為の8つの門の内、テルアビブ近郊にある当時の地中海との窓口であったJaffa港に最も近い門。ここから旧市街に入る際には、なんとも言えないFF感が漂う。

 

 

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エスの棺。もちろん中には何も入っていない。棺の中を見るために長蛇の列ができており、数時間待つこともある模様。 もう少し観光客がいなければ、重度のFF感を醸し出すであろうポイント。上から一筋の光が差しているのもポイント。

 

 

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旧市街内のユダヤ人地区にあるBBQショップ。驚くべきことに、旧市街の中にはこうしたファーストフード的な店がたくさんある。旧市街の中には記憶が正しければ35,000人の人々が暮らしていて、非常に敬虔な宗教者もいれば、普通にこの街が好きで暮らしている人もおり、そういった人々向けの側面もあるのだろう。しかしエルサレムでBBQショップを見るとは夢にも思わなかった。バーベキューは豊洲でやるものだと思ってました。

 

 

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旧市街内のイスラムエリア。ちなみに旧市街内はイスラム教徒エリア、キリスト教徒エリア、ユダヤ教エリア、アルメニアエリアに分かれており、地区により趣がかなり異なる。尚、アルメニアエリアがあるのは、アルメニアが世界で一番最初に国としてキリスト教を採用したという歴史背景があるためである。なんだその重層な歴史の積み重なりは。

 

 

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旧市街内の嘆きの壁。こちらも驚くべきほど観光地化されていて、嘆きの壁に近寄るには帽子が必要なのだが、その無償レンタルサービスまで存在する。もちろん、敬虔なユダヤ教徒もいる。白い紙に願い事を書いて、それをこの壁の隙間に挟むことが習わしになっている。

 

 

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旧市街内のユダヤ教徒のエリア。左下に写っている方々は、伝統的なユダヤ教徒の格好をされた方々。ユダヤ教徒の中にも様々な流派があり、こうした黒いコートに黒い帽子を被る人もいれば、また違った服装をする人もいる。なんとなくユダヤ教徒といえばこの黒いハットのイメージがあったため、勝手に19世紀のロンドンにいる感を味わった。ちなみに左の奥に写っている塔のようなものはイスラム教に関連する施設で、この距離で違う宗教の施設がひしめき合っている。

 

 

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エルサレム旧市街全景。壁で区切られている中が旧市街のエリア。この壁自体はオスマン帝国時代に建てられたもの。エルサレムバビロニアとかアケメネス朝ペルシアとかローマ帝国とかオスマン帝国と英国とか様々な国に支配されてきた歴史があり、歴史の重層感がマックスである。特に、世界史を受験でやった身としては、新バビロニア帝国を建国したナポボラッサルと、バビロン捕囚を行ったネブガドネザル2世が名前として出てきた際にはなんとも言えぬ感慨に包まれ、思わず高校の同級生に連絡した。ナポボラッサルってどんな名前やねん。

 

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一先ず今回は写真でお茶を濁した。もっと理解していきたいと思う。テルアビブもそうだが、エルサレムはそもそもいけんの?レベルで日本では認識されていると思うが、非常にアクセスしやすいし、少なくとも平時は全く危険を感じない。ガイドによると夜はおしゃれなバーやナイトクラブが賑わっているレベルらしい。まことに思い込みというのは恐ろしいもので、今回を足を踏み入れて現実を見ることができて本当に良かったと思う。

イスラエルカルチャー

テルアビブ大学のオリエンテーションの一環で、外国人のテルアビブへのスムーズな

immigrationの促進を担当する自治体の女性が来て、市に関する色々な説明をしてもらった。この説明がなんともイスラエルカルチャーを反映していて面白かった。

 

まず、「夢は掴みにいくものよ!」みたいなことが自治体の説明から出てくる。その方は、30年前ほどにアメリカからイスラエルに移住してきて、初めはラジオの仕事をしていたところ、様々なネットワーキングや努力を重ねて最終的に念願であった外務省の機関や自治体の仕事を手に入れてきた。この経緯に関する説明も、ものすごいスピーチのうまさ(実際、大学でPublic speakingやLeadershipの講師をしていたこともあるらしい)と、熱量で話してきて、"You have nothing to lose!" とか"Network and grab a chance"とかをたたみかけてくる。正直、自治体の説明だから「こういう制度がある」とか、せいぜいその程度の話だと思っていたら、スピーチの半分以上はもはやmotivational speachでだった笑 こんなことは、日本の自治体ではまず考えられないと思われる。

こういった人が自治体にいるということが、アグレッシブでquickでCuriousと言われているイスラエルのカルチャーを反映しているんじゃないかと思った。

 

もう一つは、自治体が提供している無料のイベントの豊富さ。OLIMというFacebookのサイトにおいて自治体が企画している無料のイベントが多数見られると説明の中であったのだが、それが市のホールを使ったサルサパーティーから"Startup Nation"という有名な本の著者の講演までかなり充実していて、週に1回以上のペースで興味深いイベントが開催されている。これが実際に定量的に見て多いのか、実際に参加している人はどれだけいるのかはまた別の話なのだが、少なくとも担当者の熱量とサイトの情報量を見る限りかなり力を入れているのがわかる。この他者と繋がるイベントの多さと、"Network and grab a chance"みたいなメンタリティが相まって、新しいことが生まれる土壌みたいなものが作られているんじゃないかと思った。

 

 

何はともあれ、新しい自治体観を得ることができました笑

 

 

Coller School of managementのDeanの話

昨日からテルアビブに来ている。所属しているIESE MBAの交換留学プログラムの一環でテルアビブ大学のColler School of Management在籍する予定で、2ヶ月の滞在となる見込み。昨日着いて早速街の中で色々と発見があるのだが、その辺はおいおい。

 

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今日は交換留学生の初日ということで、様々なセッションがあったが、とにかくColler School of Managementの学長(Zviran氏)によるプレゼンが良かった。

 

まず、イスラエルが何で生計を成り立ててきたか、という話から始まるのだが、これが

今のハイテク国家を築き上げるまでの変遷がわかって面白い。

イスラエルは20世紀初頭頃からほぼ1から国を築き上げてきたが、国を養っていくためにまず最初に基幹産業としたのは、オレンジだった。Jaffa Orangeと言われるもので、温暖な気候を利用して寒冷なヨーロッパに売って儲けた。その次に注目したのが、コットンを使った繊維業。そこからワインへと続く。これらはすべて農産品であるが、問題なのはイスラエルは基本的に砂漠地のため、水がない。だから、砂漠で最小限の水の使用で済むように、灌漑技術が発達した。農産品の他にもファイバー(?)を使った車や、産業部品を作ったりし、現在の主力であるソフトウェアを中心としたITに続いていく。

ここで面白いなと思ったのは、この国は建国が20世紀に入ってからだから、常に何か1から事業や産業を作り上げてきたんだな、と思ったこと。とにかく稼がないと国が回らないから、何か商売の種になるものを作ったり取引したりできないかと考えてきた。プレゼンの中で明言はされていなかったけど、この歴史が、今"Start up nation"と呼ばれているイスラエルを作った一つの要素なんじゃないかと思った。

 

次に、イスラエルでなぜ起業大国になったのか、という話があった。産官学が連携して、という話があった上で、なぜイスラエルに優れた起業人材が多く輩出されるかという話になり、鍵の一つとしてやはり軍隊の存在が挙げられていた。

イスラエルには兵役があり、若者は一定年数軍隊で働かなければならないのだが、周辺国との緊張がある中でリアルな現場で若くとも自ら判断をしなければならない経験をし、これがDecision Makingの力を高めるとプレゼンの中で話されていた。

このDecision Makingの力が実際にどう育まれ、どう経営に活きてくるのかの話はイスラエル滞在中もっと咀嚼したいと思ったが、聞く限りでは①そのスキルをスキルとして経営に活かすという話と、②Decision makingの経験をすることで大組織で指示を仰ぐというメンタリティから、自律的なメンタリティに切り替わり、それが起業そのものを行うことを後押しする、という話の二つがあると思った。

この話は、①日本の起業シーンを高めるという話と、②自分のスキル、というどちらの意味でも興味がある。①に関しては学長とも直接話してみたが、メンタリティを育てるという側面があるため、若年期からこのメンタリティを育むようなシステムを導入することが大事だと話していた。

 

最後に、テルアビブ大学としての戦略の話が面白かった。

イスラエルにはWeizman instituteというライフサイエンスに関わる世界的な研究機関や、テクニオンという優れたエンジニアリング人材を輩出する大学など、幾つもの優れた学術機関がある。その中でテルアビブ大学をどう位置付けるかという話があり、現在の戦略は"Entrepreneurship"で圧倒的な地位を確保することを掲げている。

実際、テルアビブ大学はEntrepreneurshipの分野では世界の大学の中で9位というランキングを持っており、その規模とリソースを鑑みても異様に高い位置にいる。これは、高い技術や研究能力を持った理系学部に加え、それを世の中に出していくためのマネジメント能力が身につく学部の両方を抱えるテルアビブ大学の特徴を活かした結果、実現されている。

この話も、個人として興味があるのはこれを日本にどう当てはめられるかという点。日本にも優れた研究機関は多く存在するが、イスラエルほどにはそれを事業にマッチさせられていない。この循環をどう作っていくかを、滞在期間中のイスラエルにてヒントを見つけていきたいと思った。

 

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期待通り刺激はありそうだな、という感覚を初日から得ることができて、Goodな日だった。