Mediterranean and beyond

TokyoからBarcelonaを超えTel Avivまで。海と空をまたぐおもしろブログ。

Haifa - 宗教が混在する街

Tel Avivから電車で1.5時間程かけて、イスラエル第3の都市であるHaifaに来ている。この街の歴史は古く紀元前14世紀には街があり、その後この地域の宿命のようにフェニキア人、東ローマ帝国ササン朝ペルシア、十字軍、オスマン帝国等に支配されてきた歴史を持つ。現在は海上貿易の重要な拠点となっており、人口30万人を抱える都市になっている。郊外にはMITを超えると言われ、ノーベル賞輩出数が世界10位のイスラエル工科大学(テクニオン)もある。なんといっても、この街のハイライトはバハーイー教の世界第二の聖地である、バハーイー庭園だった。

 

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鉄道駅から歩いてすぐにあるGerman Colonyというエリアの坂の一番下から坂を見上げると、バハーイー庭園がある。この景色は圧巻で、夜にライトアップされた姿はなおやばし。尚、Haifaは"イスラエルのサンフランシスコ"にも例えられるようで、坂にびっしりと建物が建てられた感じはそういうあだ名がつくのもうなづける。まあ、この景色以外にサンフランシスコっぽさがあるところはないが。

 

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夜にGerman Colonyの坂の下からバハーイー庭園を見上げるの図。この一帯はオシャンティな店が並ぶ。

 

バハーイー教とは、バーブ教という宗教にルーツを持つ新興宗教。全世界に189か国、500万人の信者がいると言われ、布教している国の数でいくとキリスト教に次いで世界で2番目の宗教であると言われている。バーブ教イスラムシーア派にルーツを持ち19世紀にイランで興った宗教であるが、イスラム法シャリーア)の廃止などを謳い徐々にイスラム教から分離し(現在はイスラム教だとはみなされていない)、イランの政府から弾圧され、1850年に始祖であったバーブが処刑された。バハーイー教というのはバーブの最初の弟子達の一人であったバハーウッラーバーブの教えを継いでイランで起した宗教で、バーブ教と同様の理由でバハーウッラーがイランから追放されイラクやトルコに逃れ、最終的にHaifaの近くのアッコーという街に流れ着いたことから、この地に強いゆかりを持つ宗教である。

この宗教とバハーイー庭園、いくつかの意味で非常に面白かった。

 

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まずは、バハーイー教の教えが街全体の空気と密接に関係しているように感じたこと。バハーイー教というのは非常に寛容(この描写が正しいのかわからないが)な宗教で、一神教であり神の教えを伝える預言者がいると言っているが、それがアブラハムでもイエスでもムハンマドでもバハー・ウッラー(バハーイー教創始者)でもOKだとしている。また、男女平等やナショナリズムの廃絶なども教えとしており、地球上の人間って皆んな平等だよね、というような考えを持っている。非常にPeacefulな教えを持っているのだ。

そして、この教えが、Haifaという街に体現されているように感じる。この街には、ユダヤ教もいれば、キリスト教のカルメル派、イスラムドルーズ派イスラム教アフマディー教団等様々な宗教が混在(*)しており、それらが平和に共存していると言われている。街角のレストランには、人種も宗教も関係ないよね、というような看板を掲げているレストランまである。こうした街の姿が、バハーイー教の教えとリンクしているように見えるのだ。

 

(*)ちなみに、Haifaひいてはイスラエルには驚くべきことにバハーイー教徒自体はほとんどいない。バハーイー教の教えに政治から距離を置く、というものがあるのだが、イスラエルという国は政治と宗教を巡って非常にControversialであり、そういった国からは今のところ距離を置きたい、というのが理由らしい(ガイドに聞いた)。この国に聖地があるにもかかわらず、信者がほとんどいないのだ。なんちゅうこった。

 

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Haifa内のパレスチナ系料理を出すレストランの軒先に飾ってある看板。ややヒッピー感もある。

 

次に、この庭園自体の美しさがやばい。この庭園自体は1989年から建設が開始され、2001年に完成しているが、庭の手入れの美しさ、建物内の装飾品の綺麗さ、庭園からの景色がすごい。この庭園自体のデザインにはバハーイー教の教えが反映されている部分があり、例えば、下からバハーイー庭園を見上げると全てが左右対称になっているのだがこれは地球上の人々は平等だよね、という教えを反映していたり、それでも花の種類や色が多様に配置されているのは、人間それぞれってユニークだよね、というような思想を反映している。なにこのユートピア感。個人的には庭園内でバーブが祭られている廟があるのだが、この中のカーペットや空間の静けさが非常に美しいと思った。写真の撮影が許されていなかったのが非常に残念。

尚、この庭園自体の建造にはUS$ 250 Milの資金がかかっており、維持費だけで年間数億円の金がかかっている。これらの資金は全て信者からの寄付で成り立っている(庭園に入るのにお金は一切かからない)。

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バハーイー庭園内。左右対称を超意識しているのがわかる。

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庭は綺麗に手入れされている。桃源郷っていう言葉が似合う感じだった。

 

最後に、このバハーイー教という宗教の存在自体を知れたことが、大きな意義であったと思う。イスラエルにいると、宗教間の争い、あるいは宗教内の間の争いに関して、様々な現実を知る。バハーイー教は、それらの争いを避け、平等を訴える。また、政治から距離を置き、ひっそりと存在しているように見える。それが、世界500万人の人に支持され、190か国近くに広がっている。こう言う存在、勢力のようなものが地球上に存在していることを確認できたことが、非常に勉強になったと思う。

 

 

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Haifaはバハーイー庭園以外にも、今回はいけなかったがネアンデルタール人がアフリカから初めてユーラシア大陸に上陸した(!)とされる激アツな遺跡が近郊にあり、オススメである。